J.S.バッハ:ロ短調ミサBWV232/モーテンセン&コンチェルト・コペンハーゲン(2013) 777851

  私事ですが、最近になりめっきり音楽を聴かなくなりました。いや、環境的に集中して聴ける環境が少なくなったといった方が正しいですね。ほんとはたくさん音楽を聴きたいのです。

 数少ない出会いの中で感動した演奏がモーテンセンのバッハです。通しては一度しか聴けていないので具体的には書く自信も素養もありませんが、これは素晴らしいバッハです。以前からCPOレーベルでチェンバロ協奏曲の素晴らしい録音を残していることは知っていましたが、しっかり聴いたのは今回が初めてでした。

 クレジットを見ると、モーテンセンは合唱以外のナンバーでは自らオルガンを弾いて指揮をしているようです。それをうなずけるのは、曲全体に浸透している流れるようなリズムです。一定の間隔で波が打ちよせては引くような心地よいリズム感です。

 ですのでベースの足取りが曲全体を貫いているのですが、上に乗っかるさまざまな声や楽器の重なりがこれ以上ないほどに絶妙なのです。細やかなニュアンスに富む息遣いがいろいろなところから聴こえては消えていく、これもまた波のようですね。この演奏で合唱はコンチェティーノ5名とリピエーノ5名に分かれおり、最大10名にしかなりません。ですので、ソロやデュエット、合唱曲が音響的に対比の関係にあるというよりは、グラデーションのように変化していき、均一な鮮明度と美感が保たれてるように思います。そのように書くといくつも存在するOVPP(One Voice per Partの略)演奏と変わりないようにも思われるかもしれません。でも、他の同じような編成のCDに比べてこの盤はさらに充実しているように思えるのです。それは、演奏水準の高さや録音の優秀さを前提にしつつ、なによりモーテンセンをはじめとする参加している北欧の音楽家一人一人のセンスが、ほかのオランダやイギリスやドイツで演奏されるそれと違うものを生み出しているように思えるのです。テンポは軽やかですが、忙しく感じるところは皆無で、むしろじっくりと味わい深い印象です。鋭い部分と劇的な感覚にも通じていることが聴いていて感じられます。A.potterの歌う深々としたAgnus Deiから、ゆっくりの立ち上がってくる終曲合唱への流れは白眉だと思います。ソリストはJ.Lunn、J.kobow、P.Harveyなどバッハのスペシャリストが揃っています。1991年にスカンジナビアの音楽家を集めて結成されたコンチェルト・コペンハーゲンの上質な演奏も聴きものです。

 以前にも来日している団体とのこと(BSでも放送していたような)、ぜひ生でも聴いてみたいですね。