J.S.バッハ:ロ短調ミサ BWV232 /ベルニウス(2004)Carus83.211

シュトゥットガルトにある楽譜出版社カールスは合唱音楽の普及を目的に1972年に設立された。カールスのCDシリーズの中心的人物といえば、そのシュトゥットガルトを拠点に手兵(シュトゥットガルトバロック管弦楽団、シュトゥットガルト室内合唱団)を創設して活動を続けるフリーダー・ベルニウスであろう。

ついでに書くとCDジャケットを飾っているマックス・アッカーマンもシュトゥットガルトゆかりのアーティストであるらしいので、地元色の強いレーベルといえそうだ。

ベルニウスといえば合唱の名匠というイメージがあったのだが、このロ短調ミサの演奏で特筆すべきなのはオーケストラの鳴らし方の見事さにある。Credo in unum Deum(私は唯一の神を信じる) できっちりヴァイオリンのポリフォニーが聴こえること、Patrem omnipotentem(万能の父を)でトランペットとティンパニが合唱の隙間から効果的なタイミングで盛り上げてくれること、Christe eleison(キリストよ、憐れみたまえ) でコンティヌオが快適なリズムを刻んでくれる巧みさは、簡単なことのようであって、実はあまりお目にかかれないバランス感覚だと思う。


当然合唱も素晴らしい。30人規模の人数を揃え、温か味のある透明なサウンドの中に芯が通っている高精度な合唱はこの録音の存在価値の基盤となっている。私はSanctus(聖なるかな)のフーガ主題をここまで克明かつ鮮やかに表現しきった演奏を知らない。華麗なトゥッティが兎角混濁しがちのSanctusで繊細なニュアンスを引き出している貴重な音源といえるだろう。

「あの音も、この音も自然に聴こえる喜び」をベルニウス盤は、古今の名盤の中でもっとも体験させてくれるもののひとつだと私は思う。


ブックレットより
ブックレットより