バルトーク:管弦楽のための協奏曲Sz.116 /スクロヴァチェフスキ (2002) OC 306

OC306
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エッジの効いたバルトークが聴きたい!そんな欲求にスクロヴァチェフスキは鮮やかに応えてくれる。このCDは彼がエームス・クラシックスでレコーディングした初期のものでミスターSもギリギリ80歳手前という若さ(?)の時のものだ(現在は90歳を超えている)。

 

収録されているのは共にバルトーク晩年の作品で、渡米前の《ディヴェルティメント》Sz.113(1939)と渡米後の《管弦楽のための協奏曲》Sz.116(1943)である。社会情勢的にも人生的にも非常に厳しい時代の2作であるが、シリアス度の低いことで知られている。しかしそれでもエッジの効いた演奏の方が楽しめると、私は思う。

《管弦楽のための協奏曲》が、いくら大衆向けの作品だと評されているとしても、それでもバルトーク特有の性急な展開と沈滞した悲しみの交差はあるし、ところどころ神経質なサウンドが芸術家の人生を語っているように聴こえてしまう。

スクロヴァチェフスキは、神経質なサウンドの、例えば低弦が地を這うように語るところや、ヴァイオリンのトレモロ、木管の素早く細かいフレーズ、ハープが出てくるところ、どこを取っても明確な輪郭と濁りのない明るさを既定している。唐突なテンポの変化においてもギアの入れ替えはスムーズで、むしろそれを楽しんでいるくらいにバシバシ決まっている。

 

この鮮明さは分析的ともいえるのだが、随所にふっくらとした質感のある旋律が挟み込まれていて、感覚的に気持ちが良い仕上がりになっているので純粋に楽しめる。感覚的なノリとか気持よさってこういう作品でも体験できるんだ。スクロヴァチェフスキ、職人気質にして粋な音楽家ということか。