モーツァルト:ディヴェルティメントK.136-138/フライブルク・バロック・オーケストラ (2002) HMC901809 or HMA1951809

HMC901809
HMC901809

モーツァルトのディヴェルティメントといえばK.136‐138の3曲がまず浮かぶ。この「ディヴェルティメント」という用語は、日本語では嬉遊曲(きゆうきょく)なんて書くが、はっきりとした形式はどうやら定義されていないらしい。軽い娯楽音楽というイメージは半分当たっていると思うが、モーツァルトの音楽にはもう少し踏み込んだ世界観が広がっている。当時多くのディヴェルティメントは1声部1人で演奏されていた可能性が高いとニール・ザスローの解説で読んだことがあるが、それに反してK.136‐138の録音には室内オケの編成を採用しているものも多く存在する。

このミュレヤンス&フライブルク・バロック・オーケストラの録音も各パート3~4人の編成を採用している。そのためなかなか厚みのある響きになっている。そしてなにより、この上なく滑らかな肌触りなのが特徴である。古楽オケにありがちのザクザクとしたアタックはまったくない。鋭さは避けられ、丸みを帯びた浮き上がってくるようなノンヴィブラートで弾いている。でもメリハリがないわけではなく、むしろ内声に細かくアクセントをつけているため、不協和な部分ははっきりとわかるし、甘ったるい軽音楽に陥っていない。

一方で真面目すぎるところもあるかもしれない。低い重心を基調とした上質のバランスを貫いていることで、K.137の冒頭ではハイドンの『十字架上の七つの言葉』にも似たシリアスさに接近しているのはそれでいいとしても、別のところではモーツァルト16歳の作品という初々しさとは少し違うのかなと思うところもある。もっと娯楽に走ってもおもしろいと思う。

また、カップリングされていたモーツァルト20歳のK.239『セレナータ・ノットゥルナ』は、ティンパニが加わってさらに立派な演奏に聴こえる。